研究課題
基盤研究(C)
1.ヒトTRKA遺伝子(NTRK1)は1番染色体(1q21-q22)に位置し、チロシンキナーゼ型神経成長因子をコードする。私たちはTRKAが先天性無痛無汗症(CIPA)の責任遺伝子であることを明らかにした。本研究ではさらに解析を進めて、5カ国9家系の症例おいてこれまで報告されていない8個の変異をホモ接合体もしくはヘテロ接合体の形で新たに検出した。2.このうち両親いずれかの検体が得られた7家系においては、変異がメンデル遺伝していることが明らかになった。しかし、母親と同胞のみの検体が得られたある家系において、変異が非メンデル遺伝している可能性が示唆された。この家系では1番染色体の父性片親性ダイソミーの機序により、患者ではTRKA遺伝子変異がホモ接合体となって発症していると考えられる。3.米国からのヒスパニック系患者は、同じ染色体の近接した領域に責任遺伝子が位置するふたつの常染色体劣性遺伝性疾患、すなわちCIPAとピルビン酸キナーゼ欠損症に罹患している。この患者ではTRKAとPKLR両遺伝子にそれぞれスプライス変異とミスセンス変異がホモ接合体の形で検出された。ふたつの疾患が同時に発症したのは、隣接遺伝子症候群のためではなく、それぞれの遺伝子に点変異が生じた結果であると判明した。このことは、ふたつの遺伝性疾患が合併するメカニズムのひとつを例示している。4.発現実験によるミスセンス変異の確認:正常TRKA cDNA発現プラスミドを鋳型に、in vitro突然変異誘発法によりミスセンス変異を導入した。これらを、TRKAを発現していない神経細胞株にトランスフェクションし、NGFに対する応答を自己リン酸化されたチロシン残基を検出することにより調べた。TRKAタンパク質の細胞外ドメインに位置するミスセンス変異では、プロセッシングの異常がおこり、自己リン酸化反応も低下していた。一方、細胞内チロシンキナーゼドメインの変異では、プロセッシングは正常に起こるが、自己リン酸化反応が著しく低下していることが明らかなった。5.以上の結果は、さまざまな民族グループにおいてCIPAの原因がTRKAの異常によることを支持し、さらに痛みは感じないが重度の遺伝性疾患であるCIPAの診断や遺伝カウンセリングに有用な情報を提供する。
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