ヒト乳癌におけるエストロゲン作用機序の解明-応答遺伝子を中心にした多角的解析-

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590294
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 鈴木 貴 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10261629)
• キーワード: Breast cancer / Efp / ERR / Estrogen / Microarray

研究概要

平成15年度の主な研究結果は下記の如くである。
1.乳癌組織における遺伝子群の発現検索。外科手術で得られた乳癌組織(20例)において、マイクロダイセクション法によって癌細胞のみを分離後、アフィメトリクスのGeneChipを用いた大規模マイクロアレーを行い、各症例における乳癌細胞でのmRNAの発現を網羅的に検索した。このデータと種々の臨床病理的因子との関連性を検討した結果、エストロゲン作用に関連すると思われる興味深い遺伝子発現として、ERRα(estrogen-related receptor α)、PPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor γ)、efp(estrogen-responsive finger protein)等を新たに見出した。
2.乳癌組臓におけるERRαの発現意義。ERRαはリガンドが不明な核内タンパクであるが、エストロゲン受容体(ER)αと高い相同性をもち、エストロゲン応答遺伝子発現を修飾すると考えられている。しかし乳癌組織における発育意義はよく知られていない。そこで乳癌組織104例におけるERRαの免疫染色を施行した。ERRαは乳癌細胞の核に陽性となり、正常乳管上皮も一部で弱陽性を示した。ERRαはリンパ節転移やERα等種々の臨床病理的因子とは相関性がみられなかったが、ERRα陽性症例は有意に再発(P=0.0056)しやすくかつ予後(P=0.0014)不良であり、独立した予後因子であった。
乳癌におけるPPARγやefpの発現意義については現在検討中であり、次年度に結果報告する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki T, Nakamura Y, Moriya T, et al.: "Effects of steroid hormones on vascular functions"Microsc Res Tech.. 60. 76-84 (2003)
• [文献書誌] Suzuki T, Tazawa C, Miura H, et al.: "Evaluation of HER2 status in human breast carcinoma"Acta Histochem Cytochem. 36. 1-7 (2003)
• [文献書誌] Suzuki T, Nakata T, Miki Y, et al.: "Estrogen sulfotransferase and steroid sulfatase in human breast carcinoma"Cancer Res.. 63. 2762-2770 (2003)
• [文献書誌] Nakamura Y, Miki Y, Suzuki T, et al.: "Steroid sulfatase and estrogen sulfotransferase in the atherosclerotic human aorta"Am J Pathol. 163. 1329-1339 (2003)
• [文献書誌] Suzuki T, Moriya T, Ishida T, et al.: "Intracrine mechanism of estrogen synthesis in breast cancer"Biomed Pharmacother. 57. 460-462 (2003)
• [文献書誌] Bassett MH, Suzuki t, Sasano H, et al.: "The NGFIB family of nuclear receptors regulates adrenal aldosterone production"Mol Endocrinol. 18. 279-290 (2004)