研究概要 |
膵臓癌(膵癌)は非常に予後不良で、膵癌征圧のためには新しい治療戦略が必要であり、遺伝子を用いた分子標的治療がその候補となる。本研究ではDUSP6/MKP-3を用いた膵癌制圧を確実にすることをめざし、DUSP6/MKP-3導入による遺伝子発現動態をマイクロアレイによる網羅的な発現プロファイル解析により、細胞死関連分子の動態を蛋白解析により検討し、また、高力価精製ウィルスを用いた遺伝子治療実験の効果を明らかにすることを目的とした。 1.DUSP6/MKP-3導入による遺伝子動態の解析:アデノウイルスベクターによるDUSP6導入により増殖抑制、細胞死誘導効果が強く認められた培養ヒト膵癌細胞PCI-35および比較的弱かったPK8を用いてDUSP6挿入ベクター、コントロールとしてLacZ挿入ベクターを感染させ、48時間後に回収してヒト遺伝子2万個解析可能なマイクロアレイを用いて発現プロファイルを比較した。その結果、PCI-35では発現の変動がコントロールでは1.5倍以下でDUSP6導入細胞で5倍以上の遺伝子が88個、10培以上変動していた遺伝子が16個認められた。PK-8では5倍以上変動している遣伝子が5個に留まった。現在、特定された遣伝子についての解析を進めている。 2.細胞死関連分子を中心とした蛋白レベルでのエフェクター分子の同定と解析:DUSP6挿入ベクター、LacZ挿入ベクターを感染させた培養ヒト膵癌細胞を感染72時間後に回収し、細胞死関連分子としてAPAF-1,Caspases, BCL関連蛋白、FASの蛋白動態を各々に対する特異的抗体を用いて免疫ブロッティング法により解析した。結果、幾つかの分子に変動が認められた。 3.実際的なin vivoでの実験的遺伝子治療:高力価精製非増殖型アデノウィルスベクターをCsC1密度勾配分離精製法により作成し、生物学的力価を決定した。
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