研究概要 |
急激な経過をたどった3例のLennertリンパ腫を免疫組織学的に検討し、8例の比較的経過の艮かったLennertリンパ腫との比較検討を行った。上記3例はいずれも血球貧食症候群や、汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)などのサイトカイン血症を呈した。このうち2例では肝臓に浸潤を来たし、1例では骨髄浸潤を見た。また1例ではリンパ節生検時の組織ではLennertリンパ腫の像を呈したが、数週間後の肝生検では高悪性度細胞傷害性Tリンパ腫の形態に転換していた。形態的にいずれの症例も類上皮細胞の小集族巣をリンパ節全域に認め、これに混って大型で類円形ないし軽度の不整を伴う核を有する芽球様細胞を数多く認めた。リンパ濾胞は残存していなかった。核分裂像も高度に認められた。類上皮細胞に混って形質細胞の高度な浸潤を見た症例もあった。肝組織の生検は2例で行われ、1例では高悪性度細胞傷害性Tリンパ腫の像を呈し、壊死やアポトーシスも認められた。この症例では剖検もなされ、肝組織では腫瘍細胞中および辺縁に高度の壊死を伴っていた。他の1例ではリンパ節同様類上皮細胞の増殖とともに異型リンパ球浸潤を認めた。3例とも1年以内に死亡し、最も短いものでは1.5ヶ月であった。免疫組織学的に腫瘍細胞は全例CD3+,CD8+,CD4-,granzyme B+,TIA-1+を示し、細胞傷害性Tリンパ球の性格を有していた。2例ではEBウイルスがEBER-1 in situ hybridizationにて陽性であった。我々は次に8例の比較的緩徐な経過を辿ったLennertリンパ腫との比較検討を行った。その結果上記8例と比べて急激な経過を辿った3例ではMIB-1陽性率が高い傾向が得られた。同様にP53陽性細胞も高い傾向があったが、有為差は得られなかった。結論的に我々の今回の研究では急激な経過を辿った3例のLennertリンパ腫は高悪性度細胞傷害性Tリンパ腫と多くの共通点があったことが確認された。このことはLennertリンパ腫が細胞傷害性Tリンパ腫と同じ系列の腫瘍であることを裏付けるものといえる。
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