研究概要 |
遺伝子診断を正しく運用するために不可欠の情報である、腫瘍組織から狙撃的に採取される検体でどこまで腫瘍全体のゲノムの変化や発現の変化が分かるのかを明らかにするために、今年度は、(1)ゲノムコピー数の腫瘍内多様性がclonalな変化を反映しているのかランダムな変化を反映しているのかを17pと8qについて明らかにし、(2)ゲノムDNAの代りにcDNAでCGHを行うことによる発現プロファイルの解析(CESH)の基礎的検討を行った。 (1)未分化型胃癌27例のCGHで高頻度に見られた17p-をLOH解析と対比した(22例が解析可能)。腺管成分を含む(TC+)ものでは全例に(しばしばその全サンプルに)LOHがみられたが、TC(-)ではLOHはまれであった。一方17p-は、TC(+)、TC(-)のいずれにも約半数にみられた。以上からTC(+)ではp53が17pの標的遺伝子と推定された。同様に高頻度に見られた8q+は、TC(+)ではarray CGHでC-MYCが標的であった。TC(-)ではarray CGHでそれらの遺伝子が変化していないことが多く、ランダムな変化を反映している可能性がある。 (2)CESHを胃癌に応用するために、胃癌細胞株Kato IIIとリンパ球を用いて種々の標識と増幅方法の検討を行った。CGHで変化の無い領域にCESHで変化を認める部分があり(1q-,3p-,5p+,13q+など)、cDNAマイクロアレイで確認する必要があるが、メチル化等による発現調節が考えられた。CGHでloss/gainがあったがCESHで変化がなかった領域(11p-、17q+、18q-、20q+)はゲノム不安定性を反映している可能性がある。増幅をT7で行いcDNA合成時に標識した結果と、cDNAをDOP-PCR(35 cycles)で増幅後標識を行った結果とはほぼ一致した。
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