研究概要 |
HER-2遺伝子の膜貫通部位コード領域に、アデニンがグアニンとなることによりイソロイシン(Ile)からバリン(Val)へのアミノ酸置換を伴う一塩基多型(SNP)が同定されている。胃癌症例と健常対照において、HER-2遺伝子の膜貫通部位コード領域におけるSNPの有無をPCR-RFLP法で検討したところ、遺伝子型Ile/Ile、Ile/Ile、Val/Valの遺伝子型の分布は胃癌症例では、各々68.9%、26.4%、4.7%、対照群は81.5%、16.7%、1.8%で、より深い深達度を示す症例、リンパ節転移を伴う症例、より進んだ病期にある症例および分化の低い症例では、Val alleを持つVal/Val,Ile/Val遺伝子型が有意に多かった。早期胃癌辺縁部の性状とHER-2遺伝子一塩基多型の相関性の有無を検討したが、辺縁明瞭な症例と辺縁不明瞭な症例の間に有意な相関性はみられなかった。 Matrix Metalloproteinase-9(MMP-9)の遺伝子のプロモーター領域に、シトシン(C)がチミン(T)となることによりMMP-9遺伝子の転写活性が上昇するSNPが同定されている、胃癌症例と健常対照において、SNPの有無をPCR-RFLP法で検討したところ、C/C、C/T、T/Tの遺伝子型の分布は胃癌症例では、各々75.1%、21.5%、3.4%、対照群は69.7%、28.1%、2.2%で、より深い深達度を示す症例、リンパ節転移を伴う症例、より進んだ病期にある症例、および分化の低い症例ではC/T, T/Tが有意に多かった。早期胃癌辺縁部の性状とSNPの相関性を検討したが、早期胃癌辺縁部の明瞭度とMMP-9のSNPの間に有意な相関性はみられなかった。 アポトーシスに関連する膜蛋白をコードするDR4(Dgath Receptor 4)遺伝子の細胞外ドメインには、シトシン(C)がグアニン(G)となることにより、スレオニン(Thr)からアルギニン(Arg)へのアミノ酸置換を伴うSNPが同定されている。そこで、胃癌と健常対照症例において、PCR-RFLP法で検討したところ、遺伝型Thr/Thr(C/C)、Thr/Arg(C/G)、Arg/Arg(G/G)の遺伝子型の分布は胃癌症例では、各々250(91.2%)例、23(8.4%)例、1(0.4%)例、対照群は317(92.2%)例、21(6.1%)例、6(1.7%)例で、深達度、リンパ節転移、および腫瘍進行期のいずれとも有意な相関はなかった。
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