研究概要 |
我々は、ホルマリン固定・パラフィン包埋切片での免疫染色に使用可能な、Occludinに対する単クローン抗体を作製した。この抗体により、以下の疾患におけるタイト結合蛋白Occludinの発現を、手術・生検によって採取された人体病理組織材料を用いて、免疫組織化学的に検討した。 1.肺腫瘍 正常肺組織および肺癌の各組織型でのOccludinの発現を検討した。その結果、正常肺組織では、気管支上皮、気管支腺、肺胞上皮でOccludinの発現を認めた。肺腫瘍では、腺癌、腺様嚢胞癌の腺腔形成部分にのみOccludinの発現を認めた。このことから、Occludinは肺腫瘍の組織型の決定に有用であることが示された(Virchows Arch,2004.)。 2.乳癌 浸潤性乳管癌と浸潤性小葉癌でのOccludinの発現を検討した。その結果、浸潤性乳管癌の全例でOccludinの発現を認めたが、浸潤性小葉癌では検討症例中わずか2例で陽性所見を得るに留まっている。このことから、Occludinの免疫染色は、上記2組織型の鑑別に有用であり、またこれらの組織発生を明らかにする上での手がかりとなり得ると考えられた(投稿準備中)。 3.結腸carcinoid腫瘍 結腸carcinoid腫瘍におけるOccludinの発現を検討した結果、20%の症例の病変内にOccludin陽性の腺腔が認められることが明らかになった。このことから、carcinoid腫瘍が上皮系腫瘍と同一の起源から発生した腫瘍であることが示唆された(Histopathology,2004.)。 4.原発性男性不妊症 原発性不妊症の精巣セルトリ細胞でのOccludinの発現を検討している。その結果、原発性不妊症の少なくとも一部の症例について、Occludinの発現低下に伴うblood-testis barrierの異常が関与している可能性が示唆された。
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