研究概要 |
本研究においては、再発多形性膠芽腫に特異的に出現する既知並びに未知の遺伝子変異を検出すべく第22番染色体についてLOH (loss of heterozygosity)解析を行い、共通欠失領域に在る遺伝子群を同定し、更にこの領域に座位する遺伝子群のgeneticおよびepigeneticな変化を解析し、多形性膠芽腫への悪性転化や再発のメカニズムを解析することを目的とした。 【研究の成果】遺伝子解析を施行した神経膠腫は、星状細胞腫(WHO grade II)36例、退形成星状細胞腫(WHO grade III)10例、多形性膠芽腫(WHO grade IV)92例(うちprimary glioblastoma 64例、secondary glioblastoma 28例)、再発膠芽腫12例である。これらの各組織(凍結標本並びにパラフィンブロック)からDNAを抽出し、microsatellite markerを用いて22番染色体の31 locusについてLOH解析を行った。検出できた共通欠失領域はprimary glioblastomaに関しては、22番染色体の22q12.3-13.2と22q13.31の2箇所のlocusであった。更に、secondary glioblastomaにおいてはprimary glioblastomaとは異なる共通欠失領域(22q12.3)が957kbの範囲に同定でき、Blast ResearchやGeneMapなどのdata baseの検索から、tissue inhibitor of metalloproteinases-3 (TIMP-3)がこの領域にある責任遺伝子として特定された。星状細胞腫やsecondary glioblastomaでは、TIMP-3の発現はプロモーターのメチル化によって制御され、LOHとの相関もみられた。また、星状細胞腫においてはTIMP-3のメチル化が予後と優位に相関し、TIMP-3が脳神経膠腫における再発,悪性転化の原因遺伝子の一つであると考えられた。
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