研究概要 |
混合性結合組織病(mixed connective tissue disease, MCTD)は他の膠原病に比べて肺高血圧症(PH)を高率に合併しPHが主要な死因となっているにもかかわらず未だPHの発症機序が明らかになっていない.MCTDにおけるPHの原因を解析するためにMCTD患者血清に含まれる抗血管内皮細胞抗体(AECA)とNK細胞を中心に研究を行った.検索の対象はMCTDでPH合併例(MCTD-PH),MCTDでPH非合併例(MCTD-nonPH),MCTD未治療例,およびコントロールとして健常者血清である.実験に用いた内皮細胞は,肺動脈,肺微小血管,および大動脈培養細胞で,以下の項目を解析した.1)患者血清中に含まれるAECAのフローサイトメトリーによる検出.2)患者血清の血管内皮細胞の増殖動態やアポトーシスに及ぼす影響のMTS法による解析.3)患者血清とNK細胞(健常者から磁気分離システムにより分離)両者による肺血管内皮細胞への傷害性等.これらの実験から以下の結果を得た.1)MCTD-PHはMCTD-nonPHおよび健常者に比べAECAを反映する平均蛍光強度比は有意に高値であった.2)AECA平均蛍光強度はMCTDの疾患活動性と相関していた.3)患者血清のみではアポトーシスを含めた内皮細胞の増殖動態に明かな影響が認められなかった.4)患者血清とIL-2で活性化したNK細胞の両者を添加したところ内皮細胞傷害を示した症例は血清中のAECAの値の高いMCTD-PHおよびMCTD未治療例であった.5)いずれの血管内皮細胞もFasを強く発現していた.以上からMCTD患者血清中のAEは疾患活動性および病期と相関することが明らかになり,AECAがPH発症に関わっている可能性が強いが未だAECAの働きとNK細胞,Fasとの関係については推測の域を出ていない.今後はAECAと,NK細胞上のFas-Lの関与を中心に解析する.
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