研究概要 |
平成15年度はβ-カテニン過剰発現によるp53蛋白発現誘導のメカニズムを解析した。12種の子宮内膜癌培養癌細胞におけるβ-カテニン遺伝子(exon 3)及びp53遺伝子(exons 5-9)の塩基配列を検索し、両者が野生型のIshikawa細胞を選択し以下の検索を行った。 1)Ishikawa細胞に変異型β-カテニン遺伝子をtransient transfection法で導入後、β-カテニン及びp53抗体で二重染色し蛍光顕微鏡で観察すると、β-カテニン過剰発現細胞で、内因性p53蛋白発現誘導が確認できた。 2)変異型β-カテニン遺伝子導入時におけるβ-カテニン/TCF複合体転写活性能は著しく亢進していた。 3)この転写活性はdominant-negative TCF4及びICATにより有意に抑制された。 4)活性型β-カテニン/TCF複合体はp53上流遺伝子であるp14ARFのpromoter活性をTCF4依存性に亢進させた。 5)変異型β-カテニン遺伝子導入によりp53下流遺伝子のp21WAF1の発現が亢進した。 6)western法にて、変異型β-カテニン過剰発現によりp14ARF, p53及びp21WAF1の蛋白発現増加が認められた。 以上の結果から、β-カテニン過剰発現によりβ-カテニン/TCF4複合体が形成され、この複合体がp14ARFのTCF binding siteを介してp14ARFの発現を誘導する。p14ARFはp53遺伝子発現を誘導し、結果として細胞周期停止作用を有すp21WAF1の発現を誘導する。現在、これらの生物学的意義を検索中である。
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