研究課題
基盤研究(C)
1.肺の腺癌,扁平上皮癌、大細胞癌、定型的カルチノイド(TC)、非定型的カルチノイド(ATC)、大細胞性神経内分泌癌(LCNEC)、小細胞癌(SCLC)におけるhAHS1の発現と、それと神経内分泌マーカーと8種のホルモンの発現、腫瘍分化度、患者予後との関連を検討した。hASH1が神経内分泌分化の性格を有する腫瘍にのみ発現し、hASH1は肺癌細胞の神経内分泌分化への決定遺伝子であることが示された。なお、全ての肺の神経内分泌腫瘍にhASH1が発現するのではなく、hASH1の発現がchromogranin A及び複数のホルモンの発現と強く相関し(p<0.0001),hASH1は肺癌のendocrine phenotypeの決定遺伝子であることが強く示唆された。また、hASH1はほぼ完全に分化したTCには発現せず、肺癌のendocrine phenotypeの決定に当たってhASH1が初期因子であることが示唆された。SCLC患者に於いては、hASH1(-)患者よりhASH1(+)患者の生存期間が有意に短く(p<=0.041)、hASH1が予後不良因子であることが証明された。2.hASH1^<-/->マウス胎児の肺には神経内分泌細胞が欠損していることが確認され、新生仔マウスが顕著なチアノーゼを呈しながら生後24時間以内で死亡し、hASH1が肺の神経内分泌細胞の発生並びに肺の発育・正常機能の維持には不可欠の因子であることが示された。現時点では、hASH1^<-/->胎児とhASH1^<+/+>胎児の肺の間に明らかな形態学的な差異は認められず、二次元電気泳動法を用いた検討でも明らかな蛋白質発現の差異は認められなかった。3.肺の神経内分泌腫瘍におけるcyclin B1の発現とRb/p16/cyclin D1pathway(Rb pathway)の破綻の違いを検討した。(1)細胞周期のG2-M移行期の制御において、high-gradeのLCNECとSCLCではcyclin B1の異常発現が一般的な現象であり、TC/ATCとLCNEC/SCLCが異なるカテゴリーであると考えられた。(2)cyclin B1とKi-67の発現が強く相関し、cyclin B1は肺の神経内分泌腫瘍の増殖能を規定する因子の一つであることが強く示唆された。(3)Rb pathwayの介するG1チェック・ポイントでは、細胞周期制御の異常はTC/ATCでは低頻度、LCNEC/SCLCでは高頻度であった。各組織型の間には、Rb pathway破綻のメカニズムが異なっており、TC/ATCにおいてはcyclin D1の過剰発現のみ、SCLCにはRbの欠損、LCNECではRbの欠損並びにcyclin D1の過剰発現とp16の欠損が要因であった。(4)上記因子は何れも患者予後とは関係せず、予後因子としてこれらの因子がtumor-type specificであると推測された。
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