研究概要 |
In situ hybridization(ISH)法は特定の核酸(DNA, RNA)の配列の有無や局在、その分布等をその核酸配列と相補的結合する核酸(プローブ)を用いて同定する新しい組織化学的方法である。方法論の改良が進み、様々な遺伝子のmRNA発現を、病理検査室に保存されている長期保存材料で同定することが可能となってきており、我々も報告してきた(Jiang S-X, Sato Y et al. Mod Pathol 17:222-229,2004, Nozawa T, Sato Y et al. Dis Colon Rectum 47:2093-2100,2004)。しかし、方法が複雑であり様々な分野への浸透は未だ低い。今年度は目的のmRNAを通常のホルマリン固定・パラフィン包埋組織で、しかも短時間で誰でも簡単に出来る方法の開発を目指した。従来より、我々は半自動装置であるMicroProbe装置(Fisher Scientific)を用いたrapid ISH法による研究を発表してきた(Tsuchiya B, Sato Y, et al. J Histotechnol 23:321-325,2000)。しかし、この方法に使用するプローブは特殊であり、市販されているプローブの種類にも限界がある。そこで、今回最も感度の点で優れていると報告されているcRNAプローブを用いたrapid ISH法の確立を目指した。その結果、基本的にrapid ISH法用に調整されている調整済み試薬類を使用して、蛋白分解酵素処理はproteinase Kを使用し、ハイブリダイゼーション溶液は指定の調整済み溶液Brigati probe diluentに最終濃度50%の脱イオン化ホルムアミド、8%のdextran sulfateを加えた溶液にDigoxigenin標識のcRNAプローブを用いてハイブリダイゼーションを2時間行う方法で、通常は2日間かかっていたISH法を3時間程度で同様の感度で簡単に目的のmRNAを検出できる方法を確立した(Sato Y, et al. J Histotechnol 2006 in press)。今回の実験では通常のcRNAを用いた従来のISH法とrapid ISH法をラットの膵臓でホルマリン固定・パラフィン包埋した組織を用い、遺伝子はinsulinとglucagonのmRNA発現を対象として比較検討し、従来法と同様の発現を特異的に捉えるように方法を改良していった。この方法の開発により、初心者でも通常のホルマリン固定・パラフィン包埋組織切片を用いて、安定して目的の遺伝子の発現を検出できるようになった。
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