研究概要 |
【背景および目的】 乳癌におけるホルモンレセプターおよびepidermal growth factor receptor 2 (HER2)の発現は、治療薬開発の標的として有用である。ER陰性・HER2陰性乳癌の細胞増殖機構については不明な点も多く、治療戦略上の新たな方向性は示されていない。そこで、本研究においては、ER陰性・HER2陰性乳癌における細胞増殖機構解明を目的として本研究を行なった。 【方法および結果】oligonucleotide microarrayによる解析結果 ER陽性・HER2陰性群、ER陽性・HER2陽性群、ER陰性・HER2陽性群、ER陰性・HER2陰性群各10例の新鮮凍結材料を収集し、oligonucleotide microarray (GeneChipR (U95Av2, Affimetrix, Santa Clara, CA, USA)により、遺伝子発現解析を行なった。 1.免疫組織化学的形質と遺伝子クラスターとには、良好な相関が認められたが完全には一致しなかった。これは、免疫組織化学における抗原性賦活化および検出系の感度向上によると考えられた。 2.ER陰性・HER2陰性群に対応する遺伝子クラスターには、CK5/6が含まれておりbasal-like sub-type (by Sorlie)に重複すると考えられた。 3.他群との比較において、55遺伝子の高発現、102遺伝子の低発現が認められた。P16,E2F-5,cdc20の高発現、cyclinD1,CDK7の低発現が認められた。 4.ER陰性・HER2陰性群では、Ki-67 LIが最も高くE2F-5との相関関係は同群特異的に認められた。 5.免疫組織化学的にE2F-5は、癌細胞細胞質内に認められた。 【まとめ】 ER陰性・HER2陰性乳癌は、Ki-67 LIが最も高く、細胞周期関連蛋白に特徴的な遺伝子発現を示す腫瘍群であることが明らかになった。
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