研究概要 |
【背景および目的】 乳癌におけるホルモンレセプターおよびepidermal growth factor receptor 2 (HER2)の発現は、治療薬開発の標的として有用である。ER陰性・HER2陰性乳癌の細胞増殖機構については不明な点も多く、治療戦略上の新たな方向性は示されていない。そこで、本研究においては、ER陰性・HER2陰性乳癌における細胞増殖機構解明を目的として本研究を行なった。 【方法および結果】 1. ER陽性・HER2陰性群(A群)、ER陽性・HER2陽性群(B群)、ER陰性・HER2陽性群(C)群、ER陰性・HER2陰性群(D群)の頻度はそれぞれ51.7%,8.6%,20.7%,19.0%であった。4群における細胞増殖活性は、D群で最も高く(36.5%),C群'(31.4男),B群(17.7%),A群(15.9%)の順に低下した。 2. ER陰性・HER2陰性乳癌においては、EGFR発現の頻度が高かった。FISH法、CISH法により、1/14例(7.1%)に遺伝子増幅が認められたのみであり、乳癌におけるEGFR発現に関する遺伝子増幅の寄与は乏しいと考えられた。 3.オリゴヌクレオチドマイクロアレー法による解析により以下の点が明らかになった。 a)免疫組織化学的形質と遺伝子クラスターとには、良好な相関が認められたが完全には一致しなかった。 b)他群との比較において、55遺伝子の高発現、102遺伝子の低発現が認められた。P16,E2F-5,cdc20の高発現、cyclin D1,CDK7の低発現が認められた。 c)ER陰性・HER2陰性群では、Ki-67 LIが最も高くE2F-5との相関関係は同群特異的に認められた。 【まとめ】 ER陰性・HER2陰性乳癌は、Ki-67 LIが最も高く、細胞周期関連蛋白に特徴的な遺伝子発現を示す腫瘍群であることが明らかになった。
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