研究概要 |
心筋架橋を有する200例、心筋架橋を有しない100例の左冠状動脈前下行枝を剖検例より採取し、これらの全長を5mm間隔で横断切片とし(1例より平均16断面)、HE・EVG染色を施した。すべての断面を光顕観察し、心筋架橋の有無を検索した。心筋架橋のある群については、最も近位で出現した部位を心筋架橋の入口部とし、最も遠位にみられた部位を心筋架橋の出口部とした。これらから、心筋架橋の認められた断面数に5mmを乗じた数値をもって、心筋架橋の長さとした。又、心筋架橋のあった断面中で、心筋架橋を構成する心筋中、最も厚い部分を心筋架橋の厚さとした。これらの、観察を終えた後に、パーソナルコンピュータ支援の画像解析装置により、すべての冠状動脈断面における内膜・中膜面積を測定し、内膜面積/中膜面積の比をもって、動脈硬化度とした。上記の一連の作業から、左冠状動脈内における心筋架橋の入口部の位置、長さ、厚さからなる心筋架橋の解剖学的特性が冠状動脈硬化に及ぼす影響を検討した。心筋架橋の直下の冠状動脈には、常に硬化度が抑制されるが、硬化度は心筋架橋の長さは、動脈硬化抑制に与える影響は殆どみられなかった。心筋架橋の厚さは平均866ミクロンで、心筋架橋の厚さが厚いと動脈硬化の抑制の程度がより有意に高まった。又、心筋架橋の長さと厚さには相関関係がみられた。又、心筋架橋に覆われた部の冠状動脈内膜では、tissue factor, tissue plasminogen activatorの血液凝固促進因子の抑制,plasminogen-activator inhibitor 1の線維素溶解因子の亢進がみられ、これらがずり応力と関連して、動脈硬化を抑制することが示唆された。茲に記載した内容につき、論文を執筆し、1つは査読中、1つは投稿準備段階にある。
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