研究概要 |
1.ヒト肉腫細胞の浸潤・転移における宿主細胞・癌細胞相互応答に関わる候補遺伝子群の選出 1)ヒト線維肉腫樹立細胞HT1080から高転移株をselection cloningし、親株との遺伝子発現差をcDNA arraays法で検討したが、有意な発現差のある遺伝子群は見出されなかった。 2)肺微小転移巣における遺伝子発現の同様な解析により、fibronection 1(FN1)遺伝子の著明な発現亢進が選別され、laser captured microdissection/real time RT-PCRにより微小転移部瘍細胞における発現亢進が検証された。 3)Heel pad(subcutaneous tissue)と大腿筋筋肉内接種という宿主細胞(環境)の違いによる腫瘍細胞の増殖と肺微小転移の違いを検討した。大腿筋内接種群では,腫瘍細胞の増殖と肺微小転移形成は飛躍的に亢進し、cDNA arrays解析でheel padと大腿筋部腫瘍間で発現に有意差のある複数の遺伝子群が選出された。そのうち大腿筋部腫瘍におけるplakoglobin遺伝子の発現低下が最も顕著で,real time RT-PCRを用いたmRNAの発現定量解析および免疫染色による蛋白発現でも確認された。 2.ヒト肉腫におけるplakoglobin遺伝孑の発現とその転移との関連性に関する検討 外科的に切除されたヒト悪性線維性組織球腫(MFH)腫瘍組織におけるplakoglobin遺伝子の発現に関し、mRNAをreal time RT-PCR法で、蛋白発現を免疫染色でそれぞれ検討し、臨床病理学的データとの関連性を解析した。MFH肺転移群では、非転移群に比べplakoglobin遺伝子のmRNAおよび蛋白レベルでの有意な発現低下が確認され、肉腫の転移形質にPlakoglobin遺伝子発現低下が関与している可能性が示唆された。その他、滑膜肉腫におけるplakoglobinの高発現所見を認め、病理診断に役立つ可能性も示唆された。
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