研究概要 |
骨外性粘液型軟骨肉腫(EMC)では、t(9;22),t(9;17),t(9;15),t(3;9)の染色体転座とそれに対応するEWS-CHN, TAF2N-CHN, TCF12-CHN, TFG-CHNの融合遺伝子が報告されているが、その役割については不明な部分が多い。EWS-CHNを組み込んだ発現ベクター(pEC1.5)を種々の量で細胞に導入して蛋白解析を行った結果、pEC1.5のDNA量依存性に複数の蛋白で細胞内蛋白量の変動が認められた。ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、pEC1.5導入後の活性は上昇する傾向がみられた。p21プロモーターの下流にルシフェラーゼを組み込んだプラスミドを導入した細胞でルシフェラーゼ活性を測定した結果、pEC1.5導入細胞では活性が低下しており、EWS-CHNのp53経路への関与が推察された。 22例のEMCについて融合遺伝子の存在を検討した結果、10例にEWS-CHN、4例にTAF2N-CHN、1例にTFG-CHNの存在が確認された。EWS-CHNは症例により種々のサイズ、切断点、欠失が存在した。特に切断点はEWSのexon8-9に集中してみられた。TAF2N-CHNでは検出された切断点は全て同じであった。融合遺伝子の検出されなかった5例について、パラフィン標本からEWSのプローブを用いたFISH法を検討したところ、1例にEWSの再構成を認めた。EMC以外の腫瘍15例(骨肉腫、通常型軟骨肉腫、腺癌など)についてRT-PCR法、FISH法の検討を行ったところ、変異遺伝子は検出されなかった。 これらの結果は、EWS-CHN産物は転写・翻訳レベルで影響を及ぼし、ある蛋白の合成を低下、または増加させることが示唆され、EMC発症メカニズムの一端を担っていると考えられた。また、CHNの再構成をみる変異遺伝子はEMCの病理組織診断の補助に有用であると思われた。
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