研究概要 |
ヒト胎生造血は卵黄嚢に始まり、AGM(Aorta-gonad-mesonephros)および肝造血を経て骨髄造血に定着すると考えられている。しかしそれに先立って、胎盤に血管や造血が発生することは注目されていない。また、ES細胞を用いた研究からflk-1陽性細胞が血管内皮や周皮細胞および造血細胞等への多分化能を有する血管芽細胞(Hemangioblast)として報告されたが、生体内で実際にその様な分化がおこっているかは十分な検討がなされていない。本研究では以上のことに着目し、母胎保護法とインフォームドコンセントに基づいて収集した胎齢2週以降のヒト胎盤を検索材料として、胎盤発生初期の胎盤絨毛の組織学的観察を行った。その結果、胎盤発生初期から胎盤絨毛内に血管内皮や血球・マクロファージが存在することを確認した。また、本研究の初年度の課題である免疫組織化学的な検討を行い、胎盤絨毛内におけるいわゆる血管芽細胞の存在をflk-1発現細胞の分布から推察し、またその発生を司る血管増殖因子およびその関連因子やそのレセプターの関係を観察した。すなわち、胎盤発生の初期からVEGFおよびそのレセプター(flt-1,flk-1,flt-4)発現細胞が胎盤絨毛に存在することを確認した。また次年の培養系実験の確立に向けて、胎盤絨毛組織から浮遊分離細胞を得て、その分離細胞中にflk-1陽性細胞が存在することを確認した。
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