代表者は最近SgIGSF(Spermatogenic Immunoglobulin Superfamily)をマスト細胞の新規接着分子として単離し、その発現にはmicrophthalmia転写因子(MITF)が必須であることを示した。即ち、野生型マウス由来培養マスト細胞(+/+-CMC)はSgIGSFを豊富に発現するが、MITF遺伝子の実質的なnull変異のホモtg/tgマウス由来の培養マスト細胞(tg/tg-CMC)はSgIGSFを発現しない。CMCをNIH/3T3線維芽細胞と共生培養すると、+/+-CMCは相当数が線維芽細胞に接着するが、tg/tg-CMCの接着細胞数は4分の1程度である。またCMCをマスト細胞欠損W/W^vマウスに腹腔内投与すると、+/+-CMCは生存するが、tg/tg-CMCは全て死滅する。この2つの欠陥がSgIGSFの発現低下によるものかを調べるため、外来性にSgIGSFを発現するtg/tg-CMCを、1)レトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入、2)SgIGSFトランスジェニックマウスの作製とtg/tgマウスとの交配により樹立した。これら2種類の、外来性にSgIGSFを発現するtg/tg-CMCはいずれも線維芽細胞への接着能が正常化し、W/W^vマウスの腹腔内での生存能についても有意な改善を示した。従って、SgIGSFが媒介するCMCの接着が腹腔内での生存に寄与すると考えられた。
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