急性細菌性腹膜炎を誘導するためにはマウスの盲腸に穴をあけて内容物を少し絞りだす方法(caecal ligation and puncture : CLP)を用いる。CLPでは盲腸に穴をあけるときに用いる注射針の太さ、あける穴の個数、盲腸から絞り出す細菌を含んだ内容物の量などの実験条件がマウスの生存率に大きく影響する。WBxC57BL/6(WBB6)F_1-+/+マウスよりもWBB6F_1-W/W^vマウスのほうが生存率が低いので、このような結果が得られるように実験条件を検討した。次に得られた条件と同じ条件でWBB6F_1-tg/tgマウスとWBB6F_1-+/+マウスを用いてCLPを行った結果、WBB6F_1-+/+マウスよりもWBB6F_1-tg/tgマウスの方がCLP後の生存率が低下していた。 WBB6F_1-+/+培養マスト細胞を腹腔に注射してから5週間後のWBB6F_1-W/W^vマウスではCLP後の生存率が回復する。そこでWBB6F_1-+/+培養マスト細胞を腹腔に注射したWBB6_1-tg/tgマウスについてもCLP後の生存率を調べた。意外なことにWBB6F_1-+/+培養マスト細胞を腹腔に注射したWBB6F_1-tg/tgマウスではCLP後の生存率が回復しなかった。このWBB6F_1-tg/tgマウス結果は、WBB6F_1-W/W^vマウスの場合と大きく異なるので、この点について検討を加えた。 好中球は細菌を殺す作用があるので、CLPを行なった後の腹腔の好中球の数はマウスの生存率に大きく影響する。そこでCLPを行い、3時間後に腹腔の好中球の数を調べた。WBB6F_-+/+マウスに比べるとWBB6F_1-W/W^vマウスは好中球の数が低下しているが、WBB6F_1-+/+培養マスト細胞を腹腔に注射したWBB6F_1-W/W^vマウスでは、好中球の数が回復する。一方、WBB6F_1-+/+マウスに比べるとWBB6F_1-tg/tgマウスは好中球の数が低下しており、WBB6F_1-+/+培養マスト細胞を腹腔に注射したWBB6F_1-tg/tgマウスでは、好中球の数が回復しなかった。 現在、この興味ある現象についてさらに解析を進めている。
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