研究概要 |
Klotho遺伝子のcDNAをpCAGGSベクターに組み込みんでKlothoプラスミドを作成し、細胞導入後Klotho蛋白の発現を確認した。KlothoプラスミドをCOS細胞に細胞導入して得られた上清を用いてHUVEC細胞を培養することによりSOD活性が上昇、MnSOD遺伝子の発現が亢進し、Klothoが抗酸化作用を有する事が明らかになった。次にマウスの尾静脈からKlothoプラスミドを注入して生体への影響を調べた所、肝臓及び腎臓でKlotho蛋白が多く産生されると共にそれらの臓器でのSOD活性の上昇、LPO濃度の低下が見られ、細胞と同様の作用が確認された。 Klotho遺伝子が血圧に及ぼす影響を調べた。高血圧発症モデルであるSHR, SHR-SPにKlothoプラスミドを注入し、6週後、12週後の血圧を測定したが特にKlothoによる変化は得られなかった。しかし腎臓と肝臓でのSOD活性の上昇、LPO濃度の低下は通常マウスと同様に見られ、NOの阻害剤であるL-NAMEを投与する事によりこれらの抗酸化作用の減弱が見られた。よってKlothoによる抗酸化作用は一部NOを介していると考えられた。 Klothoの細胞内伝達に関する研究を行った。各種細胞にKlotho蛋白を含む上清を振りかけて細胞内cAMP濃度,PKC活性を測定した所、cAMP濃度はほとんどの細胞で上昇を示したが、PKC活性はKlotho遺伝子を発現している精巣、腎臓においてのみ上昇が見られた。これによりKlothoは発現の有無により細胞内伝達が異なる事が明らかになった。また腎臓尿細管細胞であるCOS細胞への導入によりKlothoがvitaminD活性化酵素である1α-OHaseの遺伝子発現が抑制され、KlothoのCa代謝への関与が示された。
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