研究概要 |
オステオポンチン蛋白多型が膠原病疾患群の発症・進展にどのような機序で関連するかについて明らかにするため、OPN蛋白の多型構造を遺伝子工学的に改変することにより、どのドメインの多型が糸球体腎炎発症・進展に繋がるかを解明、さらにOPN遺伝子座特異的コンジェニックマウス作成により、生体に於けるOPN多型の役割を解析した。 1.OPN蛋白多型の構造解析と結合能差異の解析 (1)MRL/Mp系およびC3H/HeJ系マウス由来のOpn cDNAをもとに、無細胞蛋白合成システムによりMRL型およびC3H型のオステオポンチンを合成し、(2)合成OPNの蛋白性状をSDS-PAGE, Western blotを用いて解析した。 2.機能差異誘導ドメイン同定のための改変合成蛋白の作成・解析 PCR based site directed mutagenesisの手法を用い、C3H型、MRL型のアミノ酸置換を改変した合成蛋白を作成し、これら合成蛋白の性状を解析した。 3.OPN蛋白多型の機能差異誘導ドメインの同定 MRL/Mp-+/+マウスの脾細胞,Mφを採取し、改変合成OPNを加えて短期、mRNAを採取。これをもとにリアルタイムRT-PCRにより、蛋白多型によるサイトカイン発現誘導能の差異を解析し、少なくとも1カ所のアミノ酸置換が機能差を誘導することを見出した。 4.OPN遺伝子座特異的コンジェニックマウスの確立と病態解析 [MRL/lpr×(MRL/lpr×C3H/lpr)F1]-N2マウスをから5番染色体のOpn遺伝子座領域がヘテロ接合型の個体を選別してMRL/lprと戻し交配を13代繰り返し、Opn遺伝子座特異的コンジェニック系マウス(MRL/lpr-Opn^<C3H>)を確立した。また、これらを兄妹交配し、Opn^<MRL/MRL>,Opn^<MRL/C3H>およびOpn-^<C3H/C3H>の病態解析を行ってOpn-<C3H/C3H>において自己免疫性糸球体腎炎が抑制されることを検証し得た。 これらの結果は、Opnの1アミノ酸置換がMRL/lprに於ける糸球体腎炎感受性を規定している可能性を示唆した。
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