研究概要 |
8-オキソグアニンがDNA中に生じる経路は,(1)DNA合成時にアデニン(あるいはシトシン)に対して8-oxo-dGTPが取り込まれる場合と,(2)DNA中のグアニンが直接酸化される場合の2つに大別できる。(1)の経路に対しては,8-oxo-dGTPase(MTH1遺伝子産物)が8-oxo-dGTPを8-oxo-dGMPに特異的に分解することによって,また(1),(2)の経路でDNA中に生じてしまった8-オキソグアニンに対しては8-oxoguanine-DNA glycosylase(OGG1遺伝子産物)が働き,DNAからこれを排除することでDNA中の8-オキソグアニンの量を低く抑えていると考えられている。MTH1,OGG7それぞれ単独,および二重の欠損マウスでは,(1),(2)それぞれの経路に対する歯止めがなくなり,その結果DNA中に8-オキソグアニンが大量に蓄積されることが期待できる。これらのマウスを作製,解析した結果,OGG1遺伝子欠損マウスは1年半で約半数に肺のadenoma/adenocarcinomaが発生すること,OGG1・MTH1二重遺伝子欠損マウスではこの腫瘍の発生がみられないことが明らかになった。LC-MS/MSを用いてこれらのマウスのDNAに含まれる8-オキソグアニンの含量を測定したところ,OGG1遺伝子欠損マウス,OGG1・MTH1二重遺伝子欠損マウスいずれも野生型マウスに比べて6倍以上の8-オキソグアニンの蓄積が観察された。平成15年度はC57Bl/6Jに遺伝的背景をそろえたOGG1遺伝子欠損マウス100匹を用いて自然発癌実験を開始すると同時に,DNAマイクロアレイ解析に用いるtotal RNAを調製した。
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