研究課題
8-オキソグアニンの特徴は薬剤処理等の人為的操作なしに自然状態でDNA中に生じることである。酸素呼吸等によって生じたラジカルがDNAを攻撃することで8-オキソグアニンが生じる。この修飾塩基はCと同様、Aとも対合できることからG : C→T : Aトラスバージョン突然変異の原因となる。DNA中の8-オキソグアニンは8-オキソグアニン-DNAグリコシラーゼ(OGG1蛋白質)によって認識され塩基除去修復の過程を経て修復される。我々はOgg1遺伝子欠損マウスの肺にアデノーマ/カルシノーマが自然発生することを明らかにしてきた。またOgg1遺伝子欠損に加えて、酸化ヌクレオチドを分解することで複製過程におけるDNAへの8-オキソグアニンの取込みを抑制していると考えられているMth1を欠損させることで、さらにDNA中の8-オキソグアニン含量が増加することを期待して作製したMth1,Ogg1二重欠損マウスの解析結果から「Ogg1遺伝子は発癌抑制遺伝子である」「Mth1遺伝子欠損マウスではOgg1遺伝子欠損によって生じる肺腫瘍が抑制される」という結論を得るに至った。通常飼育状況下でOgg1遺伝子欠損マウスの肺に高頻度に腫瘍が発生したことは、Ogg1遺伝子欠損が自然発癌の原因になること、DNA中の8-オキソグアニンが腫瘍の原因になることを強く示唆している。ヒトの肺癌でOgg1遺伝子に突然変異が見つかっていることもOgg1遺伝子が哺乳動物で肺腫瘍のsuppressorとして働いていることを強く示唆している。さらに我々は8-オキソグアニンが染色体上の特定の位置に局在していることを見いだした。マイクロアレイを用いたOgg1遺伝子欠損マウスの発現解析からは、8-オキソグアニンの蓄積が特定の遺伝子の発現量を変化させるという新しい可能性を示唆する結果が得られた。
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