研究課題
基盤研究(C)
IL-10は炎症性サイトカイン産生抑制を通して敗血症時の局所および全身性の炎症反応を抑制する。IL-10のシグナル伝達因子はStat3である。まず、IL-10の抗炎症作用が自然免疫担当細胞であるマクロファージ・好中球(食細胞)のStat3によって支配されるかを知るべく、Stat3を食細胞特異的に欠失したマウスに実験的に感染性腹膜炎を誘導し、その後の生体反応を観察した。その結果、マクロファージ・好中球特異的にStat3が欠失したマウスは、過剰なサイトカイン産生による全身性炎症症候群のため敗血症に対し致死性であることが明らかとなり、食細胞に発現するStat3が敗血症時の全身性炎症の制御に中心的な役割を担うことを初めて示した。次に、食細胞による炎症制御機構の詳細を解析した。腹膜炎に関与する食細胞としては、腹腔常在マクロファージと末梢血から動員される浸潤好中球・マクロファージがある。Stat3改変マウスの末梢血白血球を枯渇させた状態でも、炎症局所で高サイトカインを示すことから、炎症制御に関わる細胞は腹腔常在マクロファージである可能性が考えられた。そこで、Stat3欠損常在マクロファージを野生型マウスの腹腔内に移入した状態での炎症反応を観察した。その結果、Stat3+/+腹腔常在マクロファージを移入されたマウスに比べ、Stat3欠損常在マクロファージを移入されたマウスでは、局所の炎症性サイトカインおよび炎症細胞浸潤は有意に増加した。この結果より、炎症反応は腹腔常在マクロファージに発現するStat3によって負に制御されることが初めて示された(投稿中)。従来、マウス種差間での免疫反応の違いが示唆されてきた。そこで、Balb/cマウスとC57BL6マウスに感染性敗血症を誘導し、自然免疫に対する反応を観察した。その結果、C57BL6マウスの免疫反応は細菌排除に働くTh1型有意であること、これにより敗血症抵抗性であることを見いだした。Balb/cマウスはTh2型有意で、敗血症に対し致死性であった。この免疫反応の違いは、食細胞のStat因子活性化の違いによることが示唆された。一方、獲得免疫の観点からTh2ケモカインとされるC10が、自然免疫の局面では食細胞の動員に働くことも示した。
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