研究概要 |
本補助金により、遺伝子改変による分泌型のサバイビン導入細胞を作成し、抗原提示細胞、T細胞との共培養による細胞障害性T細胞の誘導能を検討した。 1.分泌型サバイビン遺伝子導入腫瘍細胞の樹立とそのT細胞応答 adenoE3由来のシグナルシークエンスをサバイビン遺伝子のN末端側に導入したplasmidをK562細胞に遺伝し導入し、ssSVN-K562を作成した。培養液中に分泌されるサバイビンは数ngであった。このssSVN-K562をX線照射後、HLA-A2402陽性坦癌患者の樹状細胞およびCD8T細胞と共培養した。その結果、明らかなCD8+CTLの誘導は確認されなかった。これは分泌されるサバイビン量がごく少量であるため、十分なサバイビン由来の抗原が樹状細胞に提示されず、T細胞を活性化できないものと考えられた。 2.熱ショック蛋白質Hspは腫瘍細胞内で抗原ペプチドと結合している。そこでHsp72,Hsc73,ORP150を分泌型とする改変遺伝子を作成し、マウスの腫瘍細胞株に導入した。分泌型Hsp72,およびhsc73を発現した腫瘍は、免疫原性が増強し、腫瘍拒絶あるいは増殖抑制効果を示した。これは、抗体を用いたdepletion assayにより、CD8T細胞によるCTLの効果的な誘導によることが示された。またこれら分泌されたHsp72, Hsp73は腫瘍抗原を結合して分泌されることも示された。さらに樹立された腫瘍細胞に対する治療効果も確認された(論文投稿中)。 3.また臨床応用を目的として、サバイビン陽性のヒト腫瘍細胞株に分泌型Hsp72,Hsp73を導入した細胞株を作成している。この遺伝子導入株とHLA-A2402陽性坦癌患者の樹状細胞およびCD8T細胞およびCD4T細胞と共培養することにより、サバイビンに対するCTL応答およびCD4T細胞応答を誘導しえた。
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