Dlk(delta-like leucine zipper kinase)は肝芽細胞に発現する膜蛋白である。オーバル細胞も肝芽細胞と同じように肝前駆細胞と考えられているので、オーバル細胞にもDlkが発現しているのかどうか調べた。F344ラットにAAF/PHモデルを施行してオーバル細胞の発生を促すと、その肝臓にはDlk mRNAの強い発現を認めた。また、二重免疫組織化学染色法を用いて、CK19の発現を指標にしてオーバル細胞と同定された細胞にDlkが発現していることを確認したが、その頻度は全てのCK19^+オーバル細胞の約20%であり、Dlkを発現していないCK19^+オーバル細胞も多数存在した。Dlk^-オーバル細胞はグリソン鞘周囲に存在するのに対して、Dlk^+オーバル細胞はグリソン鞘周囲から離れて成熟肝細胞に接するように存在した。また、Dlk^+オーバル細胞の増殖能はDlk^-オーバル細胞に比べて低かった。以上の結果より、オーバル細胞は肝幹細胞に近い未熟な細胞から肝細胞に近い成熟した細胞を包括するヘテロ集合体と考えられ、Dlk^+オーバル細胞はDlk^-オーバル細胞から肝細胞への成熟期にある細胞である可能性が示唆された。 AAF/PHモデルを施行してオーバル細胞の発生を促し、ラットcDNA microarrayを用いて、オーバル細胞が出現した+/+ラットの肝臓とオーバル細胞の発生がみられないWs/Wsラットの肝臓における遺伝子の発現レベルを比較した。その結果、+/+ラットの肝臓における発現がWs/Wsラットの肝臓における発現よりも有意に高い12個の遺伝子(6個のESTを含む)を検出した。これらの遺伝子がオーバル細胞に特異的に発現することを確認するとともに、その生物学的作用について解析を進める。
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