Apcヘテロノックアウトマウスにおける高脂血症の発症状況を明らかにし、抗高脂血症剤等を用いて、高脂血症と腸ポリープ発生との関連性について検討した。 1.Apcノックアウトマウスにおける血中脂質濃度の継時的測定 Apc遺伝子ノックアウトマウスであるMinマウス及びAPC1309マウスの血中脂質濃度を継時的に測定した結果、野生型マウスに比べ、トリグリセリドのレベルの急激な上昇が認められ、総コレステロール及び遊離脂肪酸のレベルも有意に上昇した。また、肝臓の脂肪化が認められた。これらのApcノックアウトマウスが加齢とともに高脂血症を発症することが明らかとなった。 2.抗高脂血症剤投与の血中脂質レベルと腸ポリープ発生に対する影響 APC1309マウスに、PPARαのリガンドであるクロフィブレート系抗高脂血症剤ベザフィブレートやPPARγのリガンドで糖尿病薬であるチアゾリジンジオン誘導体ピオグリタゾンを投与した結果、両剤とも、血中トリグリセリドのレベルを有意に低下させ、腸ポリープの発生も有意に減少させた。 3.Apcノックアウトマウスの各臓器における脂質代謝関連酵素の発現 Apcノックアウトマウスにおける高脂血症発症のメカニズムを検討した結果、Apcノックアウトマウスでは、小腸及び肝臓で、リポプロテインリパーゼ(LPL)の発現レベルが野生型マウスに比べて顕著に低いことがわかった。また、ベザフィブレート及びピオグリタゾンの投与により、Apcノックアウトマウスの肝臓におけるLPLの発現レベルが上昇した。 4.LPL活性化剤の血中脂質レベルと腸ポリープ発生に対する影響 Minマウスに、LPL活性化剤NO-1886を投与した結果、LPLmRNAの発現上昇が認められるとともに、血清トリグリセリド値が低下した。さらに、腸ポリープの発生数も、有意に減少した。これらの結果から、MinマウスにおいてLPLの活性が低いことが高脂血症の発症及び腸ポリープの発生の両方に関与していることが強く示唆された。
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