研究概要 |
1.各種蛋白分解酵素阻害物質の咬傷局所症状に対する影響 この研究目的の実施は平成16年度に予定していたものであるが、ラット血漿より広域蛋白分解酵素阻害物質であるムリノグロブリンの簡便な大量精製法を開発することができたため、15年度に前倒しして実験を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)ムリノグロブリンにより世界で最も危険とされるクサリヘビ科に属する5属5種の蛇(Bothrops jararaca, Crotalus atrox, Echis sochureki, Trimeresurus flavoviridis, Lachesis muta muta)の蛇毒すべての局所出血壊死および浮腫活性を抑制できることが明らかになった。 (2)これは研究目的のひとつである凝固線溶系の異常が局所症状に及ぼす影響とも関係するが、凝固異常が存在すると局所出血の程度が著しく増加することが示唆された。 (3)出血毒は蛇毒中のゼラチン分解金属酵素によるものである。ムリノグロブリンは5種すべての蛇毒中ゼラチン分解金属酵素の活性を試験管内では重量比で10から20で完全に抑制するのに対して、出血活性の抑制にはその約2倍量のムリノグロブリンが必要とされた。この原因として、蛇毒中に存在する低分子の競合型金属酵素阻害物質が考えられた。この阻害物質はもともと蛇自信の防御因子として存在するが、この低分子阻害物質が投与した外来性の阻害物質と競合することにより、投与の効果を減弱させていると考えられた。このことは蛋白分解酵素阻害物質による治療を考える上で大きな障害になる可能性がある。 2.抗出血毒および抗血液凝固毒活性をもつ物質の探索 蛍光基質を使用した簡便なゼラチナーゼ活性測定法を確立し、主に、海洋生物を中心にスクリーニングを行っているが、残念ながら、今のところ発見には至っていない。
|