研究課題
ヴェネズエラ糞線虫は、まず感染幼虫と呼ばれる感染型の第III期幼虫が経皮感染し、次に幼虫は皮下結合織を体内移行し、肺を経て小腸粘膜に到達する。この間幼虫は脱皮こそしないが、寄生部位が変化するに従い生化学的に大きな変化が生じているものと思われる。今年度までに得られた成果を総合すると、感染経過に伴ってヴェネズエラ糞線虫内で起きている変化、および宿主側の応答は以下の通りであった。感染幼虫は分子量約40kDのマトリックスメタロプロテアーゼ(Sv-mmp40)を持っているが、宿主体内に入ってから少なくとも20時間以内にその活性は検出されなくなり、同時に虫体は経皮侵入の能力も失う。Sv-mmp40はおそらく経皮侵入のためにごく短時間だけ使われており、それを反映してか感染マウスもこのタンパクに対する抗体は作らない。幼虫は次に皮下結合織を進んでいくが、ここで用いられているプロテアーゼは現在のところ不明である。結合織中の虫体および肺から回収した虫体から調製した抗原には高分子量のマトリックスメタロプロテアーゼ活性が認められるが、宿主プロテアーゼの混入である可能性は否定できない。虫体に対する宿主の細胞反応は感染5時間後には有意に認められるようになり、好酸球を主体とした初期防御がおこなわれる。肺に到達した虫体は血流から気道へ移るが、この能力は肺ステージ特異的である。なぜならば、感染幼虫、肺から回収した幼虫、および腸管から回収した幼若虫をマウスに静注したところ、肺から回収した虫体のみが感染することができたからである。肺における主な病理変化は出血であり、初感染では細胞反応はみられない。肺に達した段階で、小腸粘膜での寄生に必要である食道線接着タンパクが発現するようになり、これに伴い虫体は粘膜寄生の能力を獲得するようになった。
すべて 2005 2004
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Experimental Parasitology 109
ページ: 53-57
Journal of Immunology 173
ページ: 2699-2704