研究課題
嫌気性寄生性原虫赤痢アメーバは微生物や宿主細胞を貪食し、貪食胞による分解で栄養素を得ている。また、大腸の粘膜から粗織侵入をする際には病原性因子であるシステインプロテアーゼなどの加水分解酵素を接触依存的に分泌することによって、組織融解・免疾細胞からの回避をしている。貧食・分泌に関わる分子機構を理解することは、赤痢アメーバの分裂・増殖と宿主への寄生に不可欠な生物機能を理解する上で不可欠である。我々はこれまで貧食胞での分解とリソソーム酵素の細胞内輸送に関与する低分子量GTP結合タンパク質としてRab7A及びRab7A結合タンパク質を解析してきたが、本年度は特に、ゲノム情報を用いたRab7のアイソタイプの同定とその機能解析を継続した。赤痢アメーバは単細胞真核生物としては例外中に多く90を越えるRab遺伝子をもつが、Rab7も少なくとも9種類のアイソタイプとして存在していた。これらのRab7アイソタイプはエフェクター分子の結合領域に高い相同性を有していた。本年度までにRab7A,B,D,Eの4種類の組換えタンパク質の合成並びに抗血清の作製を完了した。抗血清を用いた細胞内局在解析ではこれらのRab7アイソタイプは異なる局在を示し、重複しない機能を示唆させた。現在、それぞれのエピトープ標識した野生型或いは変異型の各アイソタイプを発現した形質転換赤痢アメーバ株を作製し、その表現型の変化を解析中である。更に、加水分解酵素の貧食胞への輸送に関与しているRab7Aの調節機構を理解することを目的としてRab7Aに結合し、その機能を調節すると予想されるタンパク質であるレトロマー様複合体の機能的解析を継続した。昨年度同定されたRab7A結合タンパク質であるVps26,Vps35,及びVps29とRab7Aとの結合をアフィニティ共精製、組換えタンパク質を用いた結合試験、酵母2ハイブリッド系、赤痢アメーバ粗抽出液虫からの共精製によって証明した。更に、Rab7Aの過剰発現株及びRab7AとVps26の共発現株を作成したところ、Rab7Aの過剰発現により細胞内システインプロテアーゼンの活性が50%減少した。更にこの減少はVps26の共発現により消失した。以上の結果は、Rab7Aはシステインプロテアーゼの分解コンパートメントへの輸送を調節し、Rab7Aとレトロマー様複合体との結合はこの過程を陰性に調節していることが示唆された。
すべて 2005 2004
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