研究概要 |
1.ヘリコバクター・ピロリ臨床株については慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌患者由来の株56株を札幌医大の協力により分離した。 2.ヘリコバクター・ピロリの培養についてはその中の10株を10%馬血清含むブルセラ液体培地、微好気性条件で大量培養を行い、さらにLPSを抽出精製した。 3.ヘリコバクター・ピロリLPSをSDS-PAGE後抗Lewis抗体でイムノブロットを行ったところ、Lewis A, Lewis B, Lewis X, Lewis Y及びH1抗体に反応するLPSがあり、ピロリ菌のLPSの中には上記の血液型抗原と同一のエピトープを持ったLPSの存在が明らかとなった。これらのエピトープはヒト細胞にも発現しており、ピロリ菌の感染により自己免疫疾患を発症する可能性がある。一方ヒト血清を用いて検討したところ、明らかにLewis抗原とは異なったエピトープを認識していることが分かった。我々はこのエピトープが2種類存在することを明らかにし、一つを高抗原性エピトープ(highly antigenic epitope)、もう一つを低抗原性エピトープ(weakly antigenic epitope)と命名した。LPSはこのどちらかのエピトープを持つかあるいは全く持たないかのいずれかで、両エピトープを持つLPSは今のところ存在しない。次年度においてはこれらエピトープの構造解明に向けて研究を行う。 4.海外のピロリ菌やピロリ菌陽性ヒト血清を収集するためにポーランドへ出張し、ポーランドの研究者との共同研究としてポーランドの患者由来株12株と患者血清20検体を手に入れた。これらの株と血清を日本のそれと比較したが、多少異なる結果が出たので、現在これを明らかにするために、さらなる実験を進めている。
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