研究課題
基盤研究(C)
ヘリコバクター・ピロリ(Hp)は1982年に胃内から分離されて以来、上部消化器疾患、特に慢性胃炎、消化性潰瘍、胃癌などの起炎菌として重要視されている。欧米に比べて日本では胃癌の発生率が高く、Hpの感染と密接に結びついている。ところが全ての感染者が発症するわけでもなく、Hpと宿主の両方に要因のあることが推定された。そこで我々はHp側の病原因子の一つであるLPSに焦点を当てて研究を行った。1.初年度(平成15年度)はHp標準株について大量培養を行い、この株からLPSを抽出した。このLPSの構造を明らかにするために、化学分析(質量分析計、GC)を行い、構造を推定した。さらに抗Lewis抗原抗体及びHp陽性患者血清との反応性を観察し、Hp-LPSがLewis抗原構造を持っており、Hp陽性患者血清はこのLPSに対する抗体の上昇が高いことを明らかにした。2.次年度(平成16年度)は国内外のHp臨床株の収集を行った。国内では札医大や秋田大病院患者からの分離、国外ではポーランドの患者由来株を実験材料として培養を行った。3.臨床株からLPSを抽出し、それを抗原として患者血清と反応したところ、LPSの反応性が株によって異なることを見いだした。反応性の高いエピトープを高抗原性エピトープ(HAE)、低いエピトープを低抗原性エピトープ(WAE)と命名して、疾患との関係を検討したところ、慢性胃炎由来株はHAE-LPSを持つ株が多く、胃癌由来株にはWAE-LPSを持つ株の多いことが明らかになった。4.Hp-LPSの多糖構造は人血液抗原であるルイス抗原と類似した構造を持ち、その構造ゆえに、人胃粘膜に定着することが考えられた。ルイス抗原に対する市販抗体を用いて各LPSとの反応性を検討したところ、株間で異なり、ルイス抗原の種類と疾患との関係は見いだせなかった。5.HAEとWAEの構造の差異を明らかにするために、質量分析計及びガスクロマトグラフによる解析を行ったが、機器分析による手法ではその差は見いだせず、非常にわずかではあるが、血清学的には充分認識できる差であろうと考えられる。今回の研究課題では多くのことが明らかになるとともに、今後解明すべき問題点も浮き彫りになった。
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