研究代表者らはHaemophilus parainfluenzae(以下H.parainfluenzae)がIgA腎症の発症に関与するとの仮説に基づいて、IgA腎症患者の末梢血IgA抗体がいかなる抗原を認識しているかを引き続き検討した。H.parainfluenzaeの臨床分離株より外膜蛋白質を調整し、SDA-PAGEで分離した。昨年度は、2枚のSDS-PAGE同時に行い、一方のゲルをimmunoblotに、そして他方のゲルより該当部位を切り出すという方法を用いていたが、本年度はimmunoblotのメンブレンからの直接の同定の可能性も検討課題とし条件の設定を行った。メンブレンのブロッキングを種々の薬剤を用いて検討したところ0.5%PVP-40が良好な結果を与えることを見いだした。immunoblotにはIgA腎症患者および健常人の血清を用いて行い、患者血清でのみ出現したバンドに含まれる蛋白質を質量分析器により解析したところ、昨年度において新規に見いだされた外膜蛋白賃であるOMPやP6とその他のIgA腎症に関与すると考えられる蛋白質が含まれていた。このうちP6に関してはすでにH.parainfluenzaeにおいて塩基配列が既知であったためHis-tagをつけた組換蛋白質を作成し、IgA腎症患者の血清を用いてimmunoblotを行ったところ、高率にP6に対するIgA抗体を保有していることが判明した。一方、OMPに関してはH.parainfluenzaeでは塩基配列が未知のため、遺伝子をクローニングした。
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