IgA腎症は日本において頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、その予後も不良の疾患であるが、いまだ原因は不明である。研究代表者らは、haemophilus parainfluenzae(以下H.parainfluenzae)がIgA腎症の発症に関与するとの仮説に基いて研究を推進してきた。われわれは以前の研究からH.parainfluenzaeの膜蛋白質と考えられるHpnAが本症に関与することを見いだしたが、同時にHpnA以外の膜蛋白質の関与を示唆する知見も得ていた。当該研究期間ではこのHpnA以外の抗原蛋白質の同定を行った。臨床分離H.parainfluenzae株より外膜蛋白質を調整し、SDA-PAGEで分離した。通常、2枚のゲルを作成し、一方をimmunoblotに使用し、その結果からもう一方のゲルより該当部位を切り出すという方法を用いていたが、本研究ではimmunoblotのメンブレンからの直接の同定の可能性も検討課題とし条件の設定を行った。immunoblotにはIgA腎症患者および健常人の血清を用いて行い、患者血清でのみ出現したバンドに含まれる蛋白質をmass spectro meterにより解析、既知のデータベースと照合することにより同定した。このようにして同定された蛋白質にはOMP(H.parainfluenzae)やP6(H.influenzae)が含まれていた。P6に関してはすでにH.parainfluenzaeにおいて塩基配列が既知であったためHis-tagをつけた組換蛋白質を作成し、IgA腎症患者の血清を用いてimmunoblotを行ったところ、高率にP6に対するIgA抗体を保有していることが判明した。一方、OMPに関しては.H.parainfluenzaeでは塩基配列が未知のため、遺伝子をクローニングした。
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