これまでの研究から、BCGおよび結核菌感染後の防御免疫の誘導には、感染初期にマクロファージが産生するIL-12およびIL-18のシグナルを受けてNK細胞が産生するIFN-γが重要な役割を果たすことがわかっている。また、BCGおよび結核菌の早期培養上清中には、Toll-like receptor 2(TLR2)経路を刺激してIL-12p40産生を誘導するタンパク性因子が存在することが示されている。IL-12p40はIL-12のサブユニットで、IFN-γ産生誘導に必須な因子であることから、このIL-12p40誘導に関与する細菌因子は、防御免疫の発現に重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、本研究ではこのIL-12p40誘導因子の特定を目的として解析を行った。Sauton培地で培養して得られた培養上清を限外ろ過で濃縮後、ヒドロキシアパタイト、陽イオンおよび陰イオン交換カラムを通したが、IL-12p40産生誘導活性はこれらのカラムに吸着せず、タンパク自体の電荷が弱いことが示唆された。ゲルろ過による分画から、IL-12p40誘導活性が分子量150-200kの画分に存在することが示された。また、この画分でTLR2を発現するHEK293細胞を刺激した場合にNF-κBの活性化が誘導されたことから、この画分のサイトカイン誘導活性はTLR2に依存することが示唆された。この画分を非還元条件でSDS-PAGE解析したところ、分子量190kおよび200kの位置にバンドが認められた。さらに、それぞれのバンドをゲルから回収し、還元条件でSDS-PAGEで解析したところ、それぞれ分子量22kおよび19kの位置にバンドがシフトした。この結果、これら結核菌因子はホモポリマーを形成して培養上清中に存在することが示された。また、TOF-MS/MS解析により、分子量19kのタンパク性因子はフェリチンファミリータンパク質(Bfr2)であることが確認され、この細菌因子がIL-12p40産生誘導に関与することが示唆された。
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