研究課題
病原菌が宿主生体内で増殖するために鉄は必須の元素である。鉄は生体内では著しく制限されており、増殖には鉄の獲得機構が必要である。ビブリオブルニフィカスは自ら産生するシデロフォア以外に、外因性シデロフォアであるエロバクチンの利用性を有しており、しかもこの鉄-エロバクチン複合体に対する外膜受容体蛋白質がエロバクチン存在下で誘導される。本研究は、本膜受容体蛋白質をコードする遺伝子(iutA)およびその上流領域に転写因子をコードすると予想されるGntR family repressor類似遺伝子(iutR)に対する解析を行った。iutAのプロモーター部位にはGntRファミリー転写因子に特徴的な塩基配列が見いいだされた。さらに、iutA上流域約5kbの解析を行った結果、iutR以外に3つの構造遺伝子(vatCDB)が存在した。これらは内膜輸送系の3つのコンポーネントと相同性を持ち、転写レベルで鉄制御を受けるオペロンとして存在していた。一方、iutRは単独の転写単位で鉄による制御は受けていなかった。iutR破壊株を作成し、mRNA及び蛋白質レベルでの解析を行い、IutRがiutAの負の転写制御因子であることを証明した。vatオペロンの機能解析のためにvatD破壊株を作成した。vatD破壊株ではエロバクチンとデスフェロキサミンBの利用能が消失したことから、vatオペロンは2つの外因性hydroxamate系シデロフォアに共通の内膜輸送系をコードすることを確認した。vatCDB-iutR-iutAクラスターのビブリオブルニフィカスにおける分布を調べたところ、本クラスターは本菌に普遍的に存在しており、鉄獲得に必須な遺伝子として保持されていると考えられる。
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