研究概要 |
猫ひっかき病(CSD)の診断法開発について平成17年度には下記の結果を得た。 従来のIF法による血清診断に用いられる抗原は,菌をVero細胞と共培養することにより検出感度が高まるが,その理由は不明である。そこで,この点を検討するために,IF法によりCSDと診断された患者血清と,IF抗体陰性であった対象コントロール血清を用い,western blottingにより各菌体蛋白との反応性を調べた。 その結果,1.SDS-PAGEでの解析では,B.henselaeとVero細胞を共培養したことによる新たな蛋白の出現や,特定の蛋白の量的な増大はなかった。2.B.henselae全菌体を抗原としたwestern blottingにおいてCSD患者血清では8種類のバンド(90,65,43,40,36,33,30,28kDa)が特異的に検出されたが,患者血清により反応パターンは様々であった。これらのバンドのうち特に65,43,36kDaのバンドは抗原性が強く,多くの患者血清でこれらのいずれかとの反応が見られた。3.患者血清との反応において,Vero細胞と共培養した菌の抗原蛋白では反応性の増強がみられた。4.Vero細胞との共培養による反応性の増強は36kDaのバンドで特に著明にみられたが,患者血清の中にはこのバンドと反応しないものもあった。 以上より,症例によって認識する菌体抗原にはばらつきがあり,特定の単独菌体成分を用いた診断法には限界があるものと考えられた。しかし,複数の菌体抗原を組み合わせた反応系の開発には可能性が残されており,65,43,36kDa等のバンドについて,さらなる解析が必要と思われる。特に,病期や病態などによる反応パターンとの関連についてさらに検討を行う必要がある。
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