研究概要 |
1.Bartonella henselae全菌体抗原のSDS-PAGEによる分析では35本以上のバンドがみられ,90,62,45(43),40,35,31,25kDa蛋白が主要成分と考えられた。このうち菌体外膜の主要蛋白は62,43,および31kDaであると考えられた。 2.猫ひっかき病を疑われた患者108例につき蛍光抗体法で抗体価を測定した結果,32症例で256倍以上のIgG抗体が検出された。これらの血清を用いて菌体蛋白との反応性を調べた。 3.菌体蛋白と患者血清のウエスタンブロットでは8種類のバンド(90,65,43,40,35,33,30,28kDa)が検出された。症例により反応パターンは様々であったが,65,43,35kDa蛋白の抗原性が強く,多くの血清がそのいずれかと反応した。菌体抗原はVero細胞との共培養により反応性が増強したが,新たなバンドの出現や,特定蛋白の量的な変化はなく,反応性の変化によるものと考えられた。反応性の増強は35kDa蛋白で著明であったが,この蛋白と反応しない血清もあった。以上より,症例によって認識する抗原にばらつきがあり,診断上有用な単一の菌体成分は見いだせなかった。従って,複数の菌体抗原を組み合わせた反応系の開発が必要で,65,43,35kDa蛋白が候補と考えられた。 4.一方,本菌は血管内皮細胞のみならず,リンパ管内皮細胞の増殖も促進し,好中球におけるCCR7の発現,およびリンパ管内皮細胞のCCL21産生を誘導した。そこで,CCL21が本菌感染のマーカーとして診断的意義をもつかの検討を行ったが,CCL21の血中濃度は他のリンパ節病変保有患者と有意差がなく,診断的価値は否定された。 5.新たに考案した培養法を用いて,野良ネコから16株のB.henselaeを分離し,その抗原的多様性を検討中である。
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