本年度(〜平成17年3月31日)の研究実施計画及び研究成果 1.計画 抗生物質耐性遺伝子の挿入変異株以外に耐性を持たない欠損変異株をワクチン株として構築する。成果 Salmonella enterica serovar Typhimurium SR-11とserovar Enteritidis HY-1を親株として、λRFedシステム、引き続きFLP/FRTシステムを用いて、lon、sulA、msbBの各遺伝子を単独あるいは複数欠損させたワクチン株を構築した(合計8株)。 2.計画 構築したワクチン株の有効性をマウス感染モデルにより調べる。成果 BALB/c及びC57BL/6マウスを用いた感染実験で、1で構築したワクチン株の安全性と有効性を調べた。その結果、lonとsulAの両遺伝子を欠損させた株が、serovar Typhimuriumとserovar Enteritidisの両方で安全性と有効性において優れていた。lon/shlA欠損株は1回の経口投与のみで長期に渡り、強毒株の経口及び皮下からの攻撃を完全に防御した。 3.計画 ワクチン株の形態を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、野生株と比較する。成果 lon/sulA遺伝子を欠損させたワクチン株の形態は野生株と類似しており、lon遺伝子単独の欠損で見られる著しいフィラメント化は認められなかった。また増殖速度においても野生株との差を認められなかった。 4.計画 ワクチン株の経口投与後の腸管での抗サルモネラ分泌型IgA(sIgA)産生細胞数の変化をELISPOT法により調べる。成果 BALB/cあるいはC57BL/6両マウスにおいて小腸粘膜固有層において特に抗サルモネラsIgA産生細胞数の増加を認めた。 以上の結果からlon/sulA欠損変異株は非常に優れた生ワクチン株であると言える。
|