研究課題/領域番号 |
15590399
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
山口 博之 杏林大学, 医学部, 講師 (40221650)
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研究分担者 |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 助手 (90255406)
田口 晴彦 杏林大学, 医学部, 講師 (20146541)
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キーワード | クラミジア・ニューモニエ / 動脈硬化 / 未梢血液PBMC / real-time PCR / Syber green / 動物モデル / 生菌 / RNA |
研究概要 |
呼吸器感染症起因菌である細胞内寄生性細菌Chlamydia pneumoniae(肺炎クラミジア)と動脈硬化症発症との関連性が注目されている。本菌による動脈硬化病態形成機構としては、気道上皮細胞や肺胞マクロファージに感染した肺炎クラミジアが何らかの機序により末梢血液細胞に移行し、泡沫化マクロファージの血管壁への蓄積を誘導することにより動脈硬化病変プラーク形成に関与するという説が有力である。しかしながら肺からどのように末梢血液細胞へ移行するのかその様式は未だ明らかになっていない。そこでまず肺から末梢血液細胞への肺炎クラミジアの移行を許す動物モデルの確立を試みた。その結果、糖尿病発症後NODマウスが本菌に対して感受性が高く、容易に肺に感染した肺炎クラミジアを生菌レベルで末梢血液細胞へ伝播させることを見いだした。NODマウスにおける肺炎クラミジアの末梢血液移行性は糖尿病非発症マウスでは認められなかった。NODマウスと同様な背景遺伝子を持つICRマウスにおいても血管への移行は認められなかった。また一部の糖尿病発症NODマウスにおいて心臓からの生菌の検出に成功した。これらのことよりNODマウスにおける肺炎クラミジアの血管移行性には糖尿病の発症が重要であることが明らかになった。さらに心臓より肺炎クラミジアが検出されたことより糖尿病発症後NODマウスは肺炎クラミジアによる動脈硬化発症機序を考える上で重要な動物モデルになると考えられた。また健康人ならびに循環器障害を持つ患者末梢血液より生きた肺炎クラミジアの検出にも成功した。健康人からの検出率は18%であった。心筋梗塞等の循環器障害を持つ患者における検出率は約40%と有意に高く、検出菌数も10^6個の末梢血液白血球あたり約100個と健康人に比べ約10倍高かった。これらの結果は肺炎クラミジアによる動脈硬化発症機序を考える上で極めて重要な新知見であると考えられた。
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