研究概要 |
[目的]敗血症は救急救命治療の発達した先進国においてもいまだ高頻度に致死的経過をたどる重篤な病態であり、その多くにグラム陰性菌感染が関与している。グラム陰性菌由来の病因物質であるエンドトキシン(LPS)は、単球・マクロファージMφによるTNF-α、IL-1β、NOなどの産生を誘導し、敗血症性ショックの発症に深く関わっている。一方、敗血症では、LPS刺激によって好中球のアポトーシスが抑制され、活性化された好中球が組織障害、さらに、多臓器不全の進展に関わっている。申請者は、今までに好中球由来の内因性防御因子・CAP11が、エンドトキシンショックにおいて防御的に働くことを明らかにしてきた。そして、平成15年度、申請者らは、CAP11がLPS刺激による好中球アポトーシスの抑制をブロックしてアポトーシスを誘導することを示した。しかし、好中球のアポトーシス抑制には単球・Mφ由来のサイトカインも関与している。そこで、平成16年度は、LPS刺激による単球のサイトカイン生成に対するCAP11の効果を検討した。 [結果]単球がLPS刺激を受けると好中球のアポトーシスを抑制するIL-1β,TNF-α,IL-8などのサイトカインを生成した。そして、CAP11は単球によるIL-1β,TNF-α,IL-8などのサイトカイン生成を阻害して好中球のアポトーシスを誘導することがわかった。さらに、CAP11は好中球、単球へのLPSの結合を著明に抑制した。 [結語]今までの研究によって、CAP11は強いLPS結合能をもつことが示されている。したがって、CAP11はLPSに結合することによってLPSの好中球、単球への結合を阻害し、その結果、LPS刺激による好中球の活性化を抑制し、また、単球によるサイトカイン生成を抑制して、好中球のアポトーシスを誘導するという作用機序が考えられた。
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