研究概要 |
敗血症のメカニズム解析ならびに治療薬開発には,エンドトキシンを急速に静脈内投与したモデルが汎用されている.しかし,その作用は一過性かつ急劇である点に臨床との隔たりがある.そこで,我々はより臨床状態に近い内因性敗血症モデルの開発を目指し,βグルカン-インドメタシン(BG/IND)併用処理モデルを開発し,様々な角度から解析を進めてきた. 敗血症のような多臓器の炎症が誘発すると,iNOS(誘導型NO合成酵素)の発現が認められる.そこで過剰に産生されたNOにより低血圧を伴うショック状態に陥ることが多くあることはよく知られている.敗血症におけるNOの役割について明らかにするために,NOS阻害剤を用いた報告は数多くある.しかし,その効果には統一性がなく,NOは両面的な働きを示すものとして議論がなされている.このような状態が起こりうるのは,実験モデルに問題があるためでないかと考えている.そこで,我々の作製したモデルにおけるNOの働きを明確にすることを目的とし解析をしてきた.本年度得られた研究実績の概要を以下に示す. 腹腔滲出細胞培養上清中のNO産生について検討したところ,BG, IND単独投与マウスではその産生は認められず,BG/IND併用投与マウスにおいて著しいNO産生上昇が認められた.そこで,NOS阻害剤であるL-NAMEを,連日併用投与し生存率について検討したところ,BG/IND-L-NAME投与マウスにおいて致死毒性の増強が確認された.さらに,BG/IND-L-NAME投与マウスは,血中並びに多臓器(肝臓・脾臓・肺・心臓・腹腔)より細菌が検出され,敗血症の病態と密接に関わる炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TNF-α)の過剰産生が認められた.また,GOT, GPT値が上昇し肝障害の誘発も認められた.以上のことから,本モデルにおいてNOは保護的な作用を示すことが明らかとなった.
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