研究概要 |
本年度は、in vivoにおいて外来投与された抗菌ペプチドの機能解析、およびin vitroの感染モデルにおける抗菌ペプチドの解析を行った。我々はすでに報告した(Microbiol.Immunol.46,741,2002)血清中で安定なD-型アミノ酸を含む抗菌ペプチド(D型抗菌ペプチド)を使い、今回、in vivoにおける抗菌活性、および高塩濃度耐性抗菌ペプチドの合成とその抗菌活性、感染防御能を検討した。D型抗菌ペプチドはマウス腹腔内に投与したE.coliの増殖を抑制できなかった。また抗菌ペプチドを高塩濃度耐性にするため、抗菌ペプチドのアミノ酸残基を置換したが、塩に対する感受性は変化しなかった。また、エンドトキシンショックの予防の可能性を探るため、LPSとの結合能について検討した。ELISAを利用したアッセイ系で、抗菌ペプチドがLPSと結合することを確認したが、リポポリサッカライド(LPS)によるマクロファージからのサイトカイン産生を阻害できなかった(Kurume Med.J.50,99,2003)。このように私たちが発見した抗菌ペプチドを使ってin vivoで感染防御を目的に使用するには幾つかの課題が残されている。 次にin vitroの感染における抗菌ペプチドの解析をするため、従来私たちの研究室で取り組んでいるMycoplasma pneumoniae(M.p.)感染系で抗菌ペプチドが誘導されるか、また抗菌ペプチドが感染防御的に機能するか気管支由来上皮細胞株を用いて検討した。M.p.および炎症性サイトカンIL-1βは細胞株におけるβ-defensin-2 mRNAを強く誘導したが、β-defensin-1 mRNAは若干増強されたのみであった。β-defensin-3 mRNAは、バックグランドに中等度の発現があるが、刺激によって全く増強を認めなかった。さらに感染防御について検討したところ、産生誘導されたβ-defensin-2がM.p.の増殖を有意に抑制することを見出した(現在、論文投稿中)。
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