研究代表者はこれまでにジフテリア毒素レセプター(DTR)の細胞外領域の切断にADAM12プロテアーゼが関与ることを明らかにしてきた。本年度は切断のメカニズムを解明するために、下記の2つのサブテーマを設定して研究を進めている。 (1)ADAM12分子の各ドメインの機能解析 a)SH3結合ドメイン:SH3結合ドメインがシグナル伝達に関与しているかどうかを、SH3結合ドメインの欠失変異体を作製し、DTRを高発現したVH細胞にトランスフェクションして、LPA刺激存在下、非存在下でDTR切断への影響を調べた。これまでにドミナントネガティブ効果を示すクリアーカットなデータは得られていない。 b)ディスインテグリンドメイン:ADAM12のディスインテグリンドメインがDTRの切断に関係しているかどうかは明らかではない。興味深い可能性として、DTRはインテグリンα3β1とアソシエートしていることから、ADAM12のディスインテグリンドメインとインテグリンα3β1が結合して、そのことで隣接するDTRを切断していることが考えられる。ADAM12のディスインテグリンドメインに欠失あるいは置換を導入し、VH細胞にトランスフェクションした時のドミナントネガティブ効果を調べるために、現在コンストラクトを作成中である。 (2)ADAM12とアソシエーションする分子の探索 MAPキナーゼカスケード分子からADAM12に直接シグナルが伝わるかどうかを調べるために、cos細胞にMEK1、ERKおよびADAM12のcDNAをトランスフェクションしLPA刺激存在下、非存在下での共沈実験を行なった。その結果、LPAで刺激した時にERK分子がADAM12と共沈してきた。この結合が直接的かあるいは未知の分子を介しているのかを明らかにするために、現在コンプレックス中の蛋白質の同定を行なっている。
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