研究概要 |
生きているが人工培地で培養できない状態に陥ったレジオネラをアメーバと共に培養すると培地での増殖能を回復し、このような菌は病原性を持つことが一般に知られている。これは、病原性と培地での増殖能が密接に関連していることを示唆している。このことを確かめるため、培地で増殖できるレジオネラが病原性を持っているか調査した。 水環境から分離されたL.pneumophilaは臨床分離株でないので病原性を有する強毒株かどうかはわからない.そこで,1986年より2004年にかけて国内(1都1道1府10県)で分離された215株のL.pneumophila環境分離株の病原性をアメーバ寒天法で調べた.その結果,すべての水環境分離株が病原性を持っていることが明らかになった.この結果は,「培養検査法は病原株の数を知る定量法である」ことも示唆している.人工水環境からレジオネラが分離培養された場合には病原株と考え,その水環境の衛生管理を徹底することが望ましいと思われる. 一方,近年,国内において給湯設備が感染源または感染源と疑われるレジオネラ院内感染が発生している.しかし,病院の給水・給湯設備のレジオネラ汚染の実態とその効果的な除菌法の報告はない.病棟浴室のシャワーヘッド拭き取り検査でL.pneumophilaが検出された大学病院において,中央循環式の給湯設備におけるレジオネラ汚染調査とその除菌を一年間にわたり行った.その結果,病院給湯施設において,湯待ち時間が長く,湯温が低い給湯栓を選んでレジオネラ培養検査を行うと,レジオネラ汚染率は約29%と高率であること,その除菌には(1)給湯水の昇温循環運転(75℃で24時間)とその間の末端給湯栓からの放水作業(2)貯湯槽の清掃(3)給湯温度を上げて維持管理することが安価で有用であることが明らかとなった.定期的な給水・給湯水のレジオネラ検査を実施し,菌が検出された場合には病原株と考えて,速やかに除菌対策をとることにより,レジオネラ院内感染を予防することができると考えられる.
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