研究概要 |
研究目的 塩素系殺菌剤の殺菌能は高PHになるほど低下することが知られている。しかし、具体的な報告は少ない。また、塩素消毒により生きているが培養できない状態の損傷菌が出現することが予想されるが、これらの損傷菌が病原性をもつか否かは不明である。本年度は1、アルカリ領域でのレジオネラ消毒効果を明らかにすること2,塩素消毒により生きているが培養法で検出できない損傷状態に陥ったレジオネラが病原性を保持しているか否かを明らかにすることを目的に研究を行った。 研究結果と考察 高pHでは塩素が効きにくいことが培養法で確認されたが、塩素接触時間が長くなるほど減少すると予測されたCFUが、一時的に増加する現象が観察された。このことは塩素消毒によりレジオネラが生きているが培養できない損傷菌に陥ることを示唆しており、蛍光染色法を併用した実験によりレジオネラが塩素消毒により培養法で検出されないが生きている損傷菌に陥ることが確認された。また、VBNC状態に陥ったレジオネラをモルモットに感染させたが、モルモットは発病しなかった。このことは培地での増殖能を失った損傷菌は生菌であるが、病原性を失っていることを示している。 結論 塩素の殺菌能は高pHになるほど低下する。 いずれのpHでも一旦減少した菌数がその後に増加する現象が認められ、この現象は「塩素消毒により菌が損傷を受け、生きているが培養できない状態に一時的に陥っている」ことに起因する。 生きているが培養法で検出できない塩素損傷菌はモルモットに対する病原性を失っている。この知見は、浴槽水における現行の培養法によるレジオネラ検出基準(検出限界以下)が妥当であることを示している。 塩素損傷菌は培養可能状態に回復するので、塩素濃度を継続的に維持する必要がある。
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