研究目的 レジオネラ症予防対策を講じるためには生きているが人工培地で培養できない状態(VBNC)のレジオネラの棲息状況と病原性について熟知しておく必要がある。しかしながら、これらについての研究は非常に少ない。本研究では清掃・消毒によりレジオネラを不検出状態にした貯湯タンクでレジオネラがどのように増殖してくるのか、塩素消毒によりVBNC状態に陥ったレジオネラに病原性があるのかを研究した。 研究結果と考察 清掃・消毒によりレジオネラを不検出状態にした貯湯タンク内でレジオネラはVBNC状態で生残しており、これらの菌がアメーバに被食されることで培養可能な状態に蘇生していることが疑われた。その期間はおよそ3週間であると推測された。また、高pHでは塩素が効きにくいことが培養法で確認されたが、塩素接触時間が長くなるほど減少すると予測されたCFUが、一時的に増加する現象が観察された。このことは塩素消毒によりレジオネラが生きているが培養できない損傷菌に陥ることを示唆しており、蛍光染色法を併用した実験によりレジオネラが塩素消毒により培養法で検出されないが生きている損傷菌に陥ることが確認された。また、VBNC状態に陥ったレジオネラをモルモットに感染させたが、モルモットは発病しなかった。このことは培地での増殖能を失った損傷菌は生菌であるが、病原性を失っていることを示している。 結論 培養法で不検出であるが、生きたレジオネラが人工水環境に生息する。 塩素消毒によりレジオネラはVBNC状態に陥るが、病原性を失う。
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