1.ε-毒素に対するモノクロナール抗体を作製し、ε-毒素の機能と相関するエピトープを明らかにすることを試みた。ε-毒素は強い致死活性を持つため、抗原として、まず、ε-毒素前駆体をホルマリンでトキソイド化したものを用いた。12クローンのハイブリドーマからモノクロナール抗体を得た。そのうち7種類の抗体がε-毒素の細胞毒性に対して中和活性を示したが、これらの抗体はいずれもε-毒素の高次構造を認識しており、phage peptide display cloning systemによるエピトープの決定は明確な結果が得られなかった。そこで、N末端側領域(Lys-14〜Gly-139)、およびC末端側領域(Met-77〜Lys-296)からなるレコンビナント毒素を抗原として使用した。その結果、Ser-2〜Met-47、Met-47〜-Met-77、Met-77〜Asn-109、Gly-139〜Ala-173、Ile-206〜Lys-296の各領域と反応するモノクロナール抗体を産生するクローン細胞がそれぞれ4クローン、4クローン、22クローン、16クローン、34クローン得られた。それらのクローン細胞が産生するモノクロナール抗体を精製し、ε-毒素分子上のエピトープを検討している。すでに11箇所のエピトープを明らかにした。 2.ε-毒素は、MDCK細胞膜上の非イオン界面活性剤不溶性膜領域(DRMs)に結合し、71量体を形成する。MDCK細胞をスフィンゴ脂質やスフィンゴ糖脂質の合成を阻害するfumonisin B1やPDMPで処理することによってε-毒素の細胞毒素活性が増加すること、スフィンゴミエリン合成の阻害剤であるD609や、G_<M1>ガングリオシドを添加することによって細胞毒素活性が減少すること、などからDRMsのスフィンゴ糖脂質がε-毒素の細胞毒性に影響を与えることを明らかにした。
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