ヒト脳微小血管より分離した周皮細胞がHIV-1変異株に感受性であり、HIV-1変異株のレセプターとして機能するCD4とコレセプターのGPR1の両者がタンパク質レベルでも発現していることを確認した。生体内では、周皮細胞は内皮細胞の内側に位置し、血管の恒常性の維持や血管新生において重要な働きをしている。また、それらは脳内では物質の透過性を制御する血液脳関門を構成する主要な細胞でもある。そこで、in vitroの系でより生体内に近い条件を再現するために、ヒト脳微小血管由来内皮細胞(Human Brain Microvascular Endothelial Cell : HBMEC)と周皮細胞(Human Brain Pericyte : HBP)の共存培養を行った。驚いたことに、HBPは樹状突起形成を伴う著しい形態変化を示すとともに、平滑筋アクチンが強く誘導されてきた。HBP単独培養では、HIV-1感染の指標となる逆転写酵素活性が検出できたが、共存培養細胞およびHBMEC単独での逆転写酵素活性は検出限界以下であった。感染後、細胞内で合成されたウイルスDNAをPCRで検出したところ、共存培養細胞では、ウイルスDNAの合成量が著しく低下していた。この結果は、共存培養を行ったHBPでは、HIV-1の細胞へのエントリーから逆転写過程までの効率が低下していることを示唆した。そこで、HIV-1と細胞の結合試験を行うと、共存培養細胞へのウイルス結合量の低下が観察された。従って、ウイルス結合量の低下が共存培養をおこなった細胞における感染性低下の原因になっていることが示唆された。
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